Menu

4 ゲノム編集とヒト受精胚研究

4.2ヒト受精胚とゲノム編集

ヒト受精胚を用いた研究にゲノム編集技術を組み合わせることによって、生命現象のより詳細なメカニズムが明らかになると期待されています。たとえば英国のグループは、ヒト受精胚で発現する遺伝子OCT4に対してCRISPR-Cas9による遺伝子変異を導入することで、受精卵が分裂して増殖し始め細胞の運命が決まる際にこの遺伝子が重要な働きをしていることを2017年に報告しました。このような初期発生の事象を解明することは、不妊の理解につながったり、また体外受精治療における受精卵のよりよい培養条件の開発に役立ったりする可能性があります。

その他には、肥大型心筋症の原因となるMYBPC3の変異修復がヒト受精胚で行われるなど、ゲノム編集技術を用いることにより、病気の原因が明らかとなり、これまで治らなかった疾患の治療法開発につながると期待されています。

一方で、このような基礎的研究を行うには多くのヒト受精胚が必要となります。ヒト受精胚は「人の生命の萌芽」ですので、これを用いて研究を行う場合には、研究の目的やヒト受精胚を用いる必要性、研究方法、研究者の実績や能力、研究機関の設備等が妥当なものでなければなりません。また、ヒト受精胚、あるいは、研究のために新たにヒト受精胚を作成する場合には精子や卵子は、ご夫婦等から適正に提供されたものであることが必要です。そのため、ヒト受精胚あるいは精子や卵子にゲノム編集を行う基礎的研究を行う場合、「ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針」(文部科学省・厚生労働省)、又は、「ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針」(文部科学省・厚生労働省)を遵守することが研究者に義務付けられています。

ページの先頭に戻る

Copyright © 日本医学会連合 All Rights Reserved.