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2 ゲノム編集とは

2.1DNA、遺伝子、染色体、ゲノムってなに?

DNA

ヒトの体はおよそ37兆個の細胞からできています。一つひとつの細胞には細胞核があり、その中には遺伝情報の本体であるDNA(デオキシリボ核酸)が入っています。DNAは2重らせん構造をした紐状の物質で、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4種類の塩基が並んでいます。人は1細胞あたり約60億塩基対のDNAを持っています。塩基が変化したり(例えばAであるべきところがGになる)、一部失われたり、余計に増えたり、塩基の並び方が変化すると病気になることがあります。

ヒトの体の中で細胞が分裂して増える際には、DNAも複製されるので、遺伝情報は新しくできた細胞に継承されます。また、DNAは生殖細胞(卵子と精子)を介して親からこどもへと受け継がれます。ですから親が持つ遺伝病(DNAの異常が原因の病気)がこどもへと継承されることがあります。

染色体

染色体・ゲノム・遺伝子
図1

DNAは細胞の中では、ヒストンと呼ばれるタンパク質と複合体を作っており、そのかたちは染色体と呼ばれています。これは、まっすぐに伸ばすと2 mにもおよぶ長い紐状のDNAを、タンパク質に巻きつけることでギュッとコンパクトな形にして、小さな細胞核の中におさめる仕組みでもあります。DNAはヒストンタンパク質の8量体(8個のヒストンの集合体)の周りをおよそ1.7周し、ヌクレオソームを作ります。これで紐上のビーズのような形になります。それがさらに何回もおりたたまれています。細胞が分裂するためにはまずDNA全体が複製され、その数が2倍となります。その後、細胞核を囲む核膜が崩壊して、染色体が2つの細胞に正確に配られます。その際に染色体はさらにギュッと凝縮して、一本一本が顕微鏡で識別できるようになります。染色体検査などで見られる形がこれです。正常なヒトでは一つの細胞あたり合計46本の染色体があり、これは父親からと母親からの染色体23対に相当します。対をなしている同じ種類の染色体(相同染色体)上のそれぞれ相当する場所には、同じ遺伝子があります。つまり、一つは父親由来で、もう一つは母親由来の遺伝子で、対立遺伝子(アリル)といいます。遺伝子については次の項を参照してください。

遺伝子とゲノム

DNAが遺伝情報として働くためには、一部がRNAに転写されてさらにタンパク質に翻訳される必要があります。翻訳というのは、DNAの並びをタンパク質を作るアミノ酸の並びに変換することです。細胞の中で「実働部隊」はタンパク質だからです。DNA上でタンパク質に翻訳される領域を「遺伝子」と呼びます。ヒトではおよそ2万個の遺伝子があります。一部の例外を除いて一人の体の細胞はすべて同じDNAを持ちます。しかし、細胞の種類によって転写・翻訳される遺伝子の組み合わせは異なります。例えば肝臓では肝細胞、神経では神経細胞として必要な遺伝子のみが選ばれて転写されます。同じDNAを持っていても、使われる遺伝子が異なるために、その細胞の個性や運命が違ってくるわけです。

ゲノムDNA中、遺伝子以外の領域には、プロモーター、エンハンサーと呼ばれる遺伝子の転写調節に重要な配列があります。これらが細胞の種類ごとに異なって機能し、使われる遺伝子が決まります。

遺伝子領域を詳細に観察すると、実はタンパク質に翻訳される部分(エクソン)とそうでない部分(イントロン)があります。遺伝子領域はいったん未成熟mRNAとして全体が転写されます。その後イントロンに相当する部分がpre-mRNAスプライシングという仕組みにより切り出され、エクソン同士がつなぎ合わされて成熟mRNAになり、これがタンパク質へと翻訳されます。この仕組みに着目した疾患のゲノム編集治療も開発中です。

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