第3回社会医学若手フォーラム開催のご案内
盛況にて終了いたしました。
ご参加のいただいたみなさまありがとうございました。
第3回社会医学若手フォーラム 参加者募集
開催趣旨
日本医学会連合社会部会の若手リトリート2019は、分野の異なる加盟団体からの参加者により、活発で積極的な会合が開催できました。引き続き、2021年度に若手リトリートの「年会」を開催予定です。それと同時に、限られた参加者による「年会」だけでなく、「持続的に」、「開かれた」交流会を開き、社会部会研究者を中心とした研究ネットワークを拡大していくことは、極めて有意義なことと思われます。
社会医学は、医療を中心とした社会の様々な現場から、研究室・実験室で行う健康・医学に関わる社会医学の基礎研究まで、多様な研究分野から成り立っています。それぞれの持ち場において活動する研究者が、各自の問題意識を互いに共有し、協働することで、より大きな成果が期待される研究領域です。同時に、こうした「若手」の活動に共感する「年長」研究者との交流も極めて有用です。
そこで、若手リトリート2019に集った参加者を軸として、相互理解を深め、医療・健康上の課題解決を志す他の多くの仲間を増やして共同研究を促進していくために、また、「社会医学」の若手リトリートの研究ネットワーク形成という当初の目標を目指すことのために、社会医学若手フォーラムを開催することとなりました。
その第1回を6月26日、第2回は8月27日にWeb開催しました。各回数名の講演についての活発な意見交換が行われ、その後の参加者同士の交流会でも新しいつながりができました。
第3回は12月4日を予定しています。今回も新しい刺激を受ける良い契機になることを期待しています。ぜひ周りの方々にもご案内ください。人々の命と健康に関わる研究者の幅広い交流と共同研究促進を志す多くの方々のご参加をお待ちしております。
開催概要
日本医学会連合 第3回社会医学若手フォーラム
日時 | 2021年12月4日(土)13:00~15:00 |
場所 | オンライン(Zoom) |
対象 | 社会医学若手フォーラムの趣旨に賛同する研究者 |
内容 | 登壇者3名による自己紹介・研究紹介・質疑および座談会 ・登壇者(敬称略、五十音順) 1)荻野 和正(日本衛生動物学会、産業医科大学) 2)嶽崎 俊郎(鹿児島大学)、下敷領一平(日本農村医学会、鹿児島大学) |
参加費 | 無料 |
定員 | 100名 |
申込方法 | 事前登録制:下記フォームより、お申込みください。 参加登録フォーム |
申込期限 | 2021年12月1日(水) |
問合先 | 山本 琢磨(兵庫医科大学法医学教室) shakai.wakate [a] gmail.com |
主催 | 日本医学会連合 第3回社会医学若手フォーラム |
タイムテーブル(予定):
13:00 開会挨拶・趣旨説明
13:10 演者1 荻野 和正(発表20分)
13:30 演者2 嶽崎 俊郎、下敷領一平(発表20分)
13:50 全体質疑・小括
14:10 ルーム別の交流、アンケート、解散
※講演終了後、全体質疑(20分)、少人数のグループ交流(50分)を行い、随時閉会の予定です。前回はこのような場での出会いから共同研究へと発展したというお話も伺っています。
〇演者詳細
演者1 荻野 和正
所属 産業医科大学 医学部 免疫学・寄生虫学
主な所属学会 日本衛生動物学会、日本寄生虫学会、日本昆虫協会
略歴
1986年3月 金沢大学 大学院理学研究科 生物学専攻修了
製薬会社にて連鎖効果を持つゴキブリ毒餌剤開発
1992年12月~1995年2月 青年海外協力隊(ホンデュラス・媒介昆虫対策)
製薬会社にてツツガムシ防除用忌避剤エアゾール開発
2001年8月 産業医科大学 医学部 寄生虫学・熱帯医学 研究生
2006年4月~ 産業医科大学 医学部 寄生虫学・熱帯医学 非常勤講師
(現 免疫学・寄生虫学)
演題名 衛生害虫対策の研究
発表要旨
私の属する日本衛生動物学会は、衛生動物およびその媒介感染症に関して、基礎的知見の蓄積から、防除技術・薬剤の開発、海外有病地でのフィールドワークと技術協力、疫学対策への応用と実践まで様々な分野の研究者が広範かつ多角的な研究が進めている。
現在、産業医科大学免疫学・寄生虫学講座で衛生動物を飼育しながら、地元の中小企業から要請が受けた共同研究等を進めている。中でも長く誘引作用・忌避作用を及ぼす資材の研究をおこなってきたが、以下、研究内容の一端について紹介する。
多様な感染症が昆虫・ダニ(いわゆる害虫)に直接、または間接的に媒介されている。媒介する害虫対策としてヒトは殺虫剤を手に入れ、対抗してきた。しかし、過剰な殺虫剤は環境汚染を招き、かつ害虫が殺虫剤抵抗性獲得を助長する、ということを人類は知りつつも新たな殺虫剤を開発しながら時間が過ごしてきた。この繰り返しに限界を感じて来た研究者は農業で成功したことがある不妊虫放飼で媒介蚊対策を進めようとしている。一方、殺虫剤を散布という形態をとらずに、害虫との接点を持たせるための誘引要素、反対の忌避要素によって害虫への対策を図るための研究も細々と続いている。例えば、ゴキブリ毒餌剤の効果が無くなるのは、ゴキブリが味に飽きるため喫食量が落ちることが原因で、学界ではBehavioral Resistanceという専門用語さえある。実際、近年でもUSDAの予算でチャバネゴキブリのBehavioral Resistanceに対する研究もなされている。しかし、日本ではゴキブリ毒餌剤で添加剤を変えて厚労省(医薬品医療機器総合機構)へ一変申請した際、説明しても撃沈したこともある。
誘引・忌避を惹起する要素は通常の行動観から異なる行動を起こすことから探索していく。これを最終的にはFieldで活用できれば研究者の本懐である。例えば、蚊の誘引忌避行動を惹起する要素は化合物、有機物、音波、熱、炭酸ガス、気体の動き、色、模様、光が挙げられる。それでも、その個体の状況、さらには老若雌雄、栄養状態、環境条件でその行動内容や強度が変化する。特に誘引行動は変わる。厄介なところとして、有意要素はMaxから反転するCritical Pointがある。中で上手く行きそうで行かないのは、誘引物質と殺虫剤の混用である。忌避作用が弱い殺虫剤が多用されるようになったものの、忌避作用が少ない殺虫剤は作用が遅いという欠点がある。これを補うため、誘引物質を応用して畜舎のハエ対策を行った。
今、取り組んでいるのは鶏舎で問題になっているダニであるワクモである。ダニは昆虫と発生生理で異なる点があるため、開発した殺虫剤を全て適用できるわけでない上、薬剤抵抗性が発達しやすい。ワクモは世界の採卵養鶏場で問題になっている。欧米、中国、韓国では殺虫剤を過剰使用して卵に混入した。誘引忌避作用を応用した対策を進めているが道半ばである。
他には寄生虫学講座の矜持として、ハエによる多包条虫の伝播に関して研究を行っている。現在、多包条虫はなぜか愛知県の野犬で見つかっており、感染に害虫が関わるかについてさらなる調査は望まれるところである。
また、地方大学らしい地元企業との共同研究の一つに先に挙げたワクモ対策の資材開発があり、何とか販売にこぎつけて今では関東の養鶏場でも使用されるまでになっている。
大学での研究業務以外、民間の環境衛生サービス企業で現場への技術導入に関わっている。害虫捕獲器のような機器導入検討等の他に、地元のイベントにおける蚊の対策にも関わっている。
演者2 嶽崎 俊郎
所属 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科
主な所属学会 日本疫学会、日本公衆衛生学会、日本プライマリ・ケア連合学会、日本医学教育学会、日本がん予防学会、日本人間ドック学会、日本小児科学会、へき地・離島救急医療学会、九州農村医学会
略歴
1982年 長崎大学医学部卒業
1982年 鹿児島大学医学部付属病院・研修医
1990年 同・助手(小児科)
1991年 JICA専門家として中国へ派遣
1993年 愛知県がんセンター研究所・疫学部・主任研究員
2002年 同・疫学・予防部・室長
2003年 現職・教授(国際離島医療学分野)
演題名 離島・へき地をフィールドとした人材育成の取組
発表要旨
離島は海で隔絶されアクセスに制限があるが故に、人口規模に応じた完結性が求められている。保健医療分野でも同様で、限られた医療資源を有効に活用するために総合診療や地域包括医療・ケアが自然と根付いていた。超高齢化が進みつつある日本で、細分化された専門医療だけで国民の健康を守るには、医療資源や財政的の面で難しくなっていくことが予想される。そのため、国は総合診療を推し進めるために様々な施策を始め、医学教育の場においても2007年から地域医療教育が必須化された。大学は専門医育成の優れた場ではあるが、地域医療教育を行うノウハウや人材に乏しかった。離島は総合診療を中心とした地域医療を学ぶには最適の場であり、離島を活用した地域医療教育は鹿児島大学の特色として発展した。
離島は疫学調査を行うにも適した場でもある。医療資源が限られ、救急疾患の搬送に時間がかかることを考えると、特に生活習慣病予防の重要性は高い。そのため、生活習慣病予防のための疫学研究を行うには、住民や行政、医療機関の理解が得られやすい。演者は、2005年から日本多施設共同コーホート(J-MICC)研究に加わり、鹿児島県の奄美島嶼地域でゲノム疫学研究を行っている。2012年には鹿児島県本土の農村地域も加わり、2025年まで追跡調査を行い、2035年まで解析を行う息の長い研究である。アクセス制限がある離島での調査には種々の困難が伴うが、現在の日本では対応可能な問題であり、種々の工夫をしながらバージョンアップしてきた。このフォールドも真に学生や研究者が疫学研究を直に学べる場である。私自身も多くのことを学ばせてもらった。
演者は、JICAとの縁で、1999年からJICA研修コースの実施にも関わり、鹿児島大学に来てからは島嶼国を対象にしたコースを開始している。ここでも、鹿児島県の離島をモデルとした研修コースを企画運営してきた。小島嶼国ではグローバリゼーションの影響で、肥満と糖尿病が著増している。背景の違いはあるものの、その本質は奄美島嶼地域で起こっていることと共通する部分も多い。日本では様々な対策や工夫が行われおり、小島嶼国における生活習慣病対策を学ぶにも良い場となっている。
今回は、これまでに行ってきた離島・へき地をフィールドとした人材育成の取組を紹介したい。