医学部入試における機会平等と医学系分野での女性の活躍推進について(声明)
平成30年9月14日(金)16時から厚生労働省記者会見室で一般社団法人日本医学会連合 会長 門田 守人、男女共同参画等検討委員会 委員長 名越 澄子が出席し、「医学部入試における機会平等と医学系分野での女性の活躍推進について」の声明を公表いたしました。
2018年9月14日
医学部入試における機会平等と医学系分野での女性の活躍推進について(声明)
一般社団法人日本医学会連合
会長 門田 守人
一般社団法人日本医学会連合は、基礎部会14学会、社会部会19学会、臨床部会96学会の計129加盟学会からなる日本の医学界を代表する学術団体であり、「医学に関する科学及び技術の研究促進を図り、医学研究者の倫理行動規範を守り、わが国の医学及び医療の水準の向上に寄与すること」を目的として掲げています。
この立場から、日本医学会連合は、学校法人東京医科大学が医学科の一般入試において女子および多年浪人受験生に得点調整を行っていたことを、教育の機会均等と公正性を著しく損ない、公平な受験ができると信じながら医学の道を志して準備を積み重ねた受験生の努力を踏みにじり、多様な背景を持つ人々が大学で学び、医学・医療分野で活躍するチャンスを入口から奪う行為として容認することができません。現在、他の医学部・医科大学における入試に関しても文部科学省が調査を進めており、最終結果報告が待たれるところです。
さて、東京医科大学に設置された内部調査委員会は、女子受験生に一律に不利な得点調整が行われていた理由を「女性は年齢を重ねると医師としてのアクティビティが下がる」ためと報告しています。これは、妊娠・出産・育児という女性のライフステージと医師としてのキャリア形成の時期が重なり、両立が困難となるケースがあることを念頭に置いたものと考えます。しかしながら、一部の事例を一般化し、個人の熱意や能力を軽視することはできません。今回、不公正入試という形で明らかになった問題の背景を思慮すると、女性医師が妊娠・出産・育児を経験しながら活躍し続けることができるよう対策を強化することこそが必要です。具体的には、保育所などの育児支援、交代可能な勤務体制や短時間勤務制など柔軟で充実した就労支援環境の整備が挙げられます。
医師全体の働き方の抜本的な見直しも、固定的な性別役割分担の見直しとともに、女性医師が仕事と育児や介護を両立し、あらゆる分野で活躍することを可能にします。すなわち女性医師の活躍を促すためには、医師全体の働き方、あるいは医療全体のあり方の抜本的な見直しも必要になります。そもそも、「過酷な医師の勤務時間」は特に勤務医で顕著です。それは「単なる勤務医の数」から来る問題ではなく、診療報酬システムなどの医療体制の問題など複合的な問題に起因しており、結果的に「過酷な医師の勤務」に繋がっています。加えて医師が都市に集中する「地域偏在」や、外科、産婦人科をはじめ、最も医師数の多い内科においても専門医が不足しつつある「診療科偏在」により、特定の地域や診療科では相対的な「医師不足」も顕著となっていることへの対応も必要です。医療の高度化や医療安全への配慮の必要性増大による医師の業務量の増加、人口の高齢化に伴う医療の需要増加も見逃せません。この現状に対応するためには、医療界全体および各医療現場の全ての関係者の意識改革が必要であるとともに、医療サービスを受ける側の理解も重要です。どうすればより良い医療供給体制を構築できるのか、国民の皆さんと共に社会全体で考えるべき喫緊の課題です。
女性の活躍の指標として学会活動が挙げられます。日本医学会連合が加盟学会に対して行ったアンケート調査では、総会員数に占める女性の割合は学会平均で23%、理事など役員の女性比率はわずか8%でした。このような状況は、女性に活躍の機会が十分に与えられてこなかったためとも言え、日本医学会連合も真摯に反省する必要があります。今後、各加盟学会にさらに働きかけを行い、医学・医療界における女性の活躍が進むよう努めていく所存です。
医学・医療の分野は幅広く、多様な活動が求められています。患者の健康と命を守る臨床医として活動する他に、研究を通して医学の発展に貢献する責務もあります。医学・医療を取り巻く環境が変化していく中、医学・医療の水準向上を目指していくためには、多様な人材の「知」を融合させ、イノベーションの創出につなげていくことが必要です。日本医学会連合は、医学を志す多様で優秀な人材が、性別・年齢などにとらわれず医学・医療の分野に参画し活躍できる環境をこれからも追求していきます。