社会医学若手フォーラム開催のご案内
盛況にて終了いたしました。
ご参加のいただいたみなさまありがとうございました。
社会医学若手フォーラム参加者募集
開催趣旨
日本医学会連合社会部会の若手リトリート2019は、分野の異なる加盟団体からの参加者により、活発で積極的な会合が開催できました。引き続き、2021年度に若手リトリートの「年会」を開催予定です。それと同時に、限られた参加者による「年会」だけでなく、「持続的に」、「開かれた」交流会を開き、社会部会研究者を中心とした研究ネットワークを拡大していくことは、極めて有意義なことと思われます。
社会医学は、医療を中心とした社会の様々な現場から、研究室・実験室で行う健康・医学に関わる社会医学の基礎研究まで、多様な研究分野から成り立っています。それぞれの持ち場において活動する研究者が、各自の問題意識を互いに共有し、協働することで、より大きな成果が期待される研究領域です。同時に、こうした「若手」の活動に共感する「年長」研究者との交流も極めて有用です。
そこで、若手リトリート2019に集った参加者を軸として、相互理解を深め、医療・健康上の課題解決を志す他の多くの仲間を増やして共同研究を促進していくために、また、「社会医学」の若手リトリートの研究ネットワーク形成という当初の目標を目指すことのために、「社会医学若手フォーラム」を開催することとなりました。
その第1回を6月26日にWeb開催予定です。新しい刺激を受ける良い契機になることを期待しています。将来的に人々の命や健康に関わる世界で働きたい高校生や学部生にも参考になる内容と思われますので、そうした方々のご参加も歓迎します。ぜひ周りの方々にもご案内ください。人々の命と健康に関わる研究者の幅広い交流と共同研究促進を志す多くの方々のご参加をお待ちしております。
開催概要
日本医学会連合第1回社会医学若手フォーラム
日時 | 2021年6月26日(土)13:00~14:35 ※終了後、振り返り会を開催予定 |
場所 | オンライン(Zoom) |
対象 | 社会医学若手フォーラムの趣旨に賛同する研究者(卵を含む) |
内容 | 登壇者3名による自己紹介・研究紹介・質疑および座談会 ・登壇者(敬称略、五十音順) 1)徳増一樹(岡山大学病院 総合内科・総合診療科) 2)中部貴央(東京大学医学部附属病院国立大学病院データベースセンター) 3)山本琢磨(兵庫医科大学法医学) |
参加費 | 無料 |
定員 | 100名 |
申込方法 | 事前登録制:下記フォームより、お申込みください。 参加登録フォーム |
申込期限 | 2021年6月24日(木) |
問合先 | 桑原恵介(帝京大学大学院公衆衛生学研究科) kkuwahara [a] med.teikyo-u.ac.jp |
主催 | 日本医学会連合社会医学若手フォーラム |
チラシ | PDF(684KB) |
タイムテーブル(予定):
13:00 開会挨拶・趣旨説明
13:05 演者1 山本琢磨(発表15分、質疑7分)
13:28 演者2 徳増一樹(発表15分、質疑7分)
13:51 演者3 中部貴央(発表15分、質疑7分)
14:15 座談会
14:35 解散
※終了約10分後から、参加者同士の交流のため、振り返り会(任意参加)を開催予定
〇演者詳細
演者1 山本琢磨
所属 兵庫医科大学法医学
主な所属学会 日本法医学会・日本SIDS・乳幼児突然死予防学会・日本先天代謝異常学会・日本法医病理学会
略歴
2006-2008年市立吹田市民病院研修医
2008-2012年大阪大学法医学教室大学院生
2012-2017年長崎大学法医学教室
2017年-兵庫医科大学法医学教室
演題名
何のための死因究明か
発表要旨
私は推理小説や事件・事故から法医学の世界に興味を持ちましたが、実際に法医学の世界に入ると、事件・事故よりも一見原因がわからない病気による死亡が意外と多いことを知りました。そこから、現在は原因不明の突然死の解明に取り組んでいます。
大学院生のころにたまたま出会った解剖症例が乳幼児の代謝疾患であったことから、先天性代謝異常症・乳幼児突然死に興味を持ち、解剖症例に遺伝子解析手法を応用し、「Metabolic autopsy—乳幼児突然死と代謝疾患—」をテーマに学位を取得しました。
その後、長崎大学法医学教室に所属し、引き続きMetabolic autopsyを用いた乳幼児突然死・代謝疾患について取り組み、次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子解析により複数の代謝疾患や不整脈が乳幼児突然死の中に隠れていることを報告いたしました。
これらの疾患は、遺伝性疾患であれば故、亡くなった方に見つかることでその家族の予防にも繋がりますし、事前にスクリーニングすることで発症予防できる等、公衆衛生としての意味合いにも繋がります。
また疾患だけでなく、正しい死因を究明することは薬物や事故の危険性を再認識することにも繋がります。法医学は様々な医学分野の知見を応用する分野でもあります。解剖だけでなく、薬物分析や個人識別は古くから法医学でも行われ発展してきましたし、近年では、死後画像診断や分子生物学的手法など、他分野で発展した技術を法医解剖に応用することも行われています。
参会の先生方のお話を伺うことで相互に発展できればと考えています。よろしくお願いいたします。
演者2 徳増一樹
所属 岡山大学病院 総合内科・総合診療科
主な所属学会 日本医学教育学会、日本プライマリ・ケア連合学会、日本内科学会
ヨーロッパ医学教育学会
略歴 愛媛県西条市出身。2009年東邦大学薬学科卒業、2013年岡山大学医学科卒業後、沖縄県立中部病院で臨床研修に従事。2017年度は沖縄県立北部病院 総合内科で勤務し、5年間臨床の日々を過ごした。2018年度より岡山大学病院 総合内科・総合診療科(同年6月~助教) に所属し、臨床・研究・教育に勤しむ。
演題名 若手医師はいつ、どのようにモチベーションが上がっているのか~医師の主体性に迫る~
発表要旨
【背景】内的モチベーションが高いほど成果があり、学習効果も高い。しかし、そのモチベーション上昇に関わる要因やプロセスの報告は医学生対象のものがほとんどであり、医師における研究はほとんどない。
【視点・理論的枠組み】社会構成主義の視点で自己決定理論(Deci&Ryan)を理論的枠組みとした。
【目的】医師としての成長過程の最初の段階である臨床研修医に着目し、モチベーション上昇の要因、上昇プロセスを明らかにする。
【デザイン】質的記述的研究
【対象】卒後2〜4年目の臨床研修医
【データ分析の方法】SCAT(Steps for Coding and Theorization)
【結果】7名(男性5人、女性2人)の臨床研修医に半構造化面接(時間50分~90分)を行った。
臨床研修医のモチベーション上昇は、外的要因から内在化を経て内的モチベーションに繋がる連続体であり、自己決定理論と類似点があった。しかし、本研究独自の点として研修医の動機づけプロセスの最初の外的要因が、主体的診療ができる特にプライマリ・ケアという診療環境やロールモデルの存在であった。これらがきっかけとなり、自分自身の医師としての理想像と現実のギャップを認識し、内在化の過程で診療の主体性や責任感という医師のプロフェッショナリズムで重要な要素が内面から沸き起こった。さらに、患者からの感謝や指導医からの承認により自己効力感が上昇し、内的モチベーションへと発展した結果、研修における原動力となっていた。つまり、医師の内的動機、診療や学習の主体性は外的要因により起こるプロセスという結果だ。
【結論】自分で何とかしないといけない診療環境や近い存在のロールモデルがうまく外的要因として取り入れられることが医師の主体性を認知、発展させる可能性がある。さらに、そのような研修環境を調整することで、臨床研修医の内的モチベーションがより高まり得る。
演者3 中部貴央
所属 東京大学医学部附属病院 国立大学病院データベースセンター
主な所属学会 日本医療・病院管理学会、日本公衆衛生学会、日本医事法学会、日本生命倫理学会
略歴 2015年早稲田大学法学部卒業。2017年京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻卒業(社会健康医学修士(専門職))、2020年同大学院博士課程修了(博士(社会健康医学)後、同年4月より京都大学大学院医学研究科医療経済学分野特定助教着任。2021年1月より、東京大学医学部附属病院 国立大学病院データベースセンター特任助教着任。
演題名
患者・利用者の視点から医療・介護の制度・政策を考える
発表要旨
医事法への関心をきっかけに、医療・介護分野の制度・政策に関連した実証研究に興味を持ち、研究に取り組んできた。取り組んできた研究のテーマのうち、①介護事業所における利用者・職員の視点からの施設評価に関する研究、および②医療紛争における裁判外紛争解決(ADR)に関する研究について紹介する。
【介護事業所における利用者・職員の視点からの施設評価に関する研究】
超高齢社会において介護需要が増加する中、介護の質がより重視される。介護の質向上に寄与するため、職員の組織文化、利用者のQOLや精神的健康状態等を質問票調査にて横断的・経時的に把握してきた。また、家族介護者の精神的健康状態や介護負担感等も併せて把握し、介護を取り巻く各ステークホルダーの視点から、研究を進めている。調査の結果から、職員の組織文化と利用者のQOLとの関連、職員の職務満足度や定着意欲への関連要因の探索など、職員・組織・利用者の各視点から多角的な分析を行ってきた。
【医療紛争における裁判外紛争解決(ADR)に関する研究】
裁判手続による医療紛争解決では、その専門性の高さから審理に時間を要することが指摘されてきた。そのため、ADRは簡易性や迅速性、廉価性などの特徴から、裁判手続と比較して利用の普及が長年期待されてきた。本研究では、医療ADR機関として活動していたNPO法人医療紛争相談センターの利用者(申立人本人及び相手方医療機関)、代理人を対象とした質問票調査・インタビュー調査を実施した。質問票調査では医療紛争相談センターのADR利用過程への評価を定量的に把握し、インタビュー調査通じて、利用者の視点からの紛争解決手続におけるADRの位置づけやADR利用および紛争解決への促進要因や阻害要因を把握するべく質的分析を行った。