第5回社会医学若手フォーラム開催のご案内
第5回社会医学若手フォーラム参加者募集
2022年5月27日(金)、6月6日(月)、6月20日(月)の12時10分より、第5回社会医学若手フォーラムをWeb開催します。今回はこれまでとは形式を変えて、ランチタイムに短時間でのフォーラムを3部に分けて行います。第1部は岩田要先生(府中刑務所)から刑務所医療の歴史と現状について、第2部は鎌田真光先生(東京大学)から教育介入・スマホ用アプリ、ゲーミフィケーションの活用など身体活動の普及戦略について、第3部では小西祥子先生(東京大学)から「妊娠しやすさ」=妊孕力(にんようりょく)の科学的な評価について、お話をいただく予定です。昼食をとりながらぜひお気軽にご参加ください。
本フォーラムは参加無料です。
参加登録フォーム https://forms.gle/AcZrNLMWjuy1aAVs8 よりお申込みください。
(参加登録は一括で行っております。一部のみご希望の方もご登録ください。)
開催趣旨
日本医学会連合社会部会の若手リトリート2019は、分野の異なる加盟団体からの参加者により、活発で積極的な会合が開催できました。引き続き、2022年度に若手リトリートの「年会」を開催予定です。それと同時に、限られた参加者による「年会」だけでなく、「持続的に」、「開かれた」交流会を開き、社会部会研究者を中心とした研究ネットワークを拡大していくことは、極めて有意義なことと思われます。
社会医学は、医療を中心とした社会の様々な現場から、研究室・実験室で行う健康・医学に関わる社会医学の基礎研究まで、多様な研究分野から成り立っています。それぞれの持ち場において活動する研究者が、各自の問題意識を互いに共有し、協働することで、より大きな成果が期待される研究領域です。同時に、こうした「若手」の活動に共感する「年長」研究者との交流も極めて有用です。
そこで、若手リトリート2019に集った参加者を軸として、相互理解を深め、医療・健康上の課題解決を志す他の多くの仲間を増やして共同研究を促進していくために、また、「社会医学」の若手リトリートの研究ネットワーク形成という当初の目標を目指すことのために、社会医学若手フォーラムを開催することとなりました。
その第1回を2021年6月26日、第2回は8月27日、第3回は12月4日、第4回を2022年3月4日にWeb開催しました。各回数名の講演についての活発な意見交換が行われ、その後の参加者同士の交流会でも新しいつながりができました。
第5回は、2022年5月27日(金)、6月6日(月)、6月20日(月)のランチタイムにオンラインでの開催となります、昼食をとりながらぜひお気軽にご参加ください。今回も新しい刺激を受ける良い契機になることを期待しています。ぜひ周りの方々にもご案内ください。人々の命と健康に関わる研究者の幅広い交流と共同研究促進を志す多くの方々のご参加をお待ちしております。
開催概要
日本医学会連合 第5回社会医学若手フォーラム
日時 | 第1部:2022年5月27日(金)12:10~12:50 第2部:2022年6月6日(月)12:10~12:50 第3部:2022年6月20日(月)12:10~12:50 |
場所 | オンライン(Zoom) |
対象 | 社会医学若手フォーラムの趣旨に賛同する研究者 |
内容 |
登壇者3名による自己紹介・研究紹介および質疑 第2部:鎌田 真光(日本運動疫学会・日本体力医学会・日本疫学会・日本公衆衛生学会、東京大学) 第3部:小西 祥子(日本人口学会・日本健康学会・日本衛生学会、東京大学) |
参加費 | 無料 |
申込方法 | 事前登録制:下記フォームより、お申込みください。 参加登録フォーム |
申込期限 | 2022年5月24日(火) |
問合先 | 山本 琢磨(兵庫医科大学法医学教室) shakai.wakate [a] gmail.com |
主催 | 日本医学会連合 第5回社会医学若手フォーラム |
タイムテーブル(予定):
12:10 演者による講演
12:30 質疑応答
12:50 終了
〇演者詳細
演者1 岩田 要
所属 法務省府中刑務所医務部
主な所属学会 日本外科学会、日本リンパ学会、日本矯正医学会
略歴
1999年 東大医学部卒・東大病院外科研修 2000年 都立府中病院外科 2003年 東大病院胃食道外科医員 2008年 東大院(外科学専攻)博士課程修了・東大院分子病理学助教 2016年 府中刑務所法務技官(医師) 2018年 矯正局矯正医療管理官付(併任)
演題名 刑務所の医療のいまむかし
発表要旨
強制的に被収容者(受刑者等)の身柄を収容している矯正施設(刑務所等)は、被収容者の健康管理及び衛生管理の責任を負っている。矯正施設においては、規模や機能に応じて医療従事者を配置し、基本的には一般社会の医療と同等の医療(以後、歴史的なものも含めて「矯正医療」という。)を被収容者に提供している。
明治以降の日本の矯正医療の歴史を辿ると、1921年司法省監獄局(後に行刑局に改称)に衛生官が設置されたのを転機に、中央指導の下で地方施設の衛生管理や医療の底上げが推し進められたことによって飛躍的に充実強化されたと言われている。しかし、衛生官が具体的にどのような問題の解消に取り組んだのかについてはこれまで十分に解明されていなかった。今回、衛生官設置当時の司法省行刑局長及び司法書記官の残した史料(主に1922年に設置された行刑制度調査委員会に関するもの。)等を用い、矯正医療充実のための施策立案過程を検証した。その結果(1)社会では家庭用医薬品で対応する程度の軽微な症状への対応の整備(保健助手及び備薬制度の整備)、(2)医薬品の使用品目制限の見直し(衛生材料取扱規則の改正)及び(3)医師獲得のための方策(給与待遇面での改善)といった、現代の矯正医療の現場でもよくとりあげられる問題に通じる議論が当時から行われていたことが明らかになった。これらの結果は、矯正医療が抱える特殊性は本質的には変わらないことを表している。
発表では上記に加え、現代の矯正医療の現場、矯正施設内の感染症対策のいまむかし等についても紹介したい。
演者2 鎌田 真光
所属 東京大学大学院 医学系研究科 公共健康医学専攻 健康教育・社会学分野
主な所属学会 日本運動疫学会、日本体力医学会、日本疫学会、日本公衆衛生学会、日本体育・スポーツ・健康学会、International Society for Physical Activity and Health、American College of Sports Medicine
略歴
宮崎県出身。2005年東京大学教育学部卒、2007年同大学院修士課程修了、2013年島根大学大学院医学系研究科博士課程修了。身体教育医学研究所うんなん(島根県雲南市立)、国立健康・栄養研究所、ハーバード大学を経て2018年より東京大学。日本運動疫学会理事、Journal of Physical Activity and Health編集委員、「パ・リーグウォーク」実行委員会委員。
演題名 身体活動の新たな普及戦略の構築-マーケティングとファン心理が生み出す熱狂とは?
発表要旨
からだを動かすこと(身体活動)が健康に重要であることは様々な研究で明らかになっていますが、世界的に運動不足(身体活動不足)は蔓延しており、その状況は悪化しているという報告もあります。
私は「世界から運動不足をなくす」ことを第一のミッションにしています。一人ひとりが自分に合ったアクティブな生活を送れる社会に向けて、身体活動・運動と健康の関連を疫学的手法で研究するほか、どうしたら非活動的な人々が活動的な生活を送るようになる支援ができるかについて研究しています。大規模なキャンペーン・まちづくりから個人を対象とした教育介入・スマホ用アプリ、ゲーミフィケーションの活用まで、様々な介入方法の開発・検証に携わっています。また、普及と健康増進の実現に向けた科学的な知見・根拠(エビデンス)を創出するほか、自治体や企業等のアドバイザーとして、政策・経済活動への橋渡しに取り組んでいます。今回のセミナーでは、これまで私が取り組んできた研究やプロジェクトを、世界の最新知見とともにご紹介し、皆さんと一緒に今後のヘルスプロモーションの課題や方向性についてディスカッションできればと思います。
【研究例】
- Kamada et al., 2018 Int J Epidemiol. 島根県雲南市における、地域全体の運動実施率を高めるプロジェクト。地域ランダム化比較試験に基づく世界初の成功例(https://doi.org/10.1093/ije/dyx248)
- Kamada et al., 2022 Med Sci Sports Exerc. プロ野球パ・リーグとの共同事業「パ・リーグウォーク」の検証(https://doi.org/10.1249/MSS.0000000000002770)
- Lee et al., 2019 JAMA Intern Med. 歩数と死亡リスクの関係。2019年Altmetric Top 100。(https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2019.0899)
- Bauman et al., 2021 Lancet. オリンピックと開催国のスポーツ実施率・身体活動。ランセット身体活動特集号に掲載。(https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)01165-X)
演者3 小西 祥子
所属 東京大学
主な所属学会 日本人口学会、日本健康学会、日本衛生学会、日本花粉学会、日本人間行動進化学会
略歴
1979年神奈川県生まれ。東京大学大学院医学系研究科准教授。専門分野は人口学、人類生態学、環境保健学ほか。2002年3月東京大学医学部健康科学・看護学科卒業。2007年3月東京大学大学院医学系研究科国際保健学専攻博士課程修了(保健学)。2007年4月東京大学大学院医学系研究科助教、2018年6月同准教授(現在に至る)。
演題名 「妊娠しやすさ」を科学する
発表要旨
世界の多くの集団が多産多死から少産少死へと向かう人口転換を経験しています。寿命が長く出生力が低い日本は、人口転換の最先端を走っているともいえます。少子化とよばれる状況は過去30年以上にもわたって続いており、いまだにその原因は解明できていません。人口学的には未婚化・晩婚化および夫婦の子ども数の減少が少子化の要因ですが、一体なぜ若者が結婚しないのか、また結婚したカップルがなぜ子どもを持たないのか、については未解明な部分が多くあると考えています。
夫婦の出生力が低下している理由の1つに「妊娠しやすさ」の低下があるのではないかと私は推測しています。さまざまな理由で子どもを持たないあるいは人数を制限する選択をする夫婦がいる一方で、望んでも授からない夫婦もいます。2015年に実施された出生動向基本調査では、子どものいない夫婦のうち実に半数以上が、不妊について心配したことがあると回答しています。この結果は子どもができないことを心配している夫婦が多いことを示しています。しかしながら実際にどの程度「妊娠しにくい」のかを客観的に測定したわけではありません。また夫婦の「妊娠しにくさ」がどの程度、少子化に寄与しているのかについてもまだわかっていません。
妊娠のしやすさのことを人口学の用語で妊孕力(にんようりょく)といいます。妊娠可能な状態になってから妊娠するまでにかかる期間である妊娠待ち時間を測ることによって、妊孕力を定量的に評価することができます。私たちはこれまでに日本人を対象として妊娠待ち時間を測定する調査を実施してきました。フォーラムではこれらの調査でわかってきた知見についてご紹介したいと思います。